武器人間を見ました。オランダ、アメリカ、チェコ合作のホラー映画で、みんな大好きPOV方式です。
率直な感想は、「久しぶりにすごいの見せられたな」です。
映画ポスターの安っぽさからは想像もつかない良作。
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第二次世界大戦中、ドイツを彷徨うソ連兵たちは味方の救難信号をキャッチします。その場所を目指していくと廃工場が。しかしその廃工場には、人なのか動物なのか、そもそも生き物なのか機械なのか、正体のわからないものに襲われるのでした。
まず言いたいのは、武器人間のビジュアルの良さ。見た目自体は戦隊モノの悪役の雰囲気に近いのですが、子供に見せられるほどのユーモア性はなく、不気味で無機質。さらに手に取り付けられているのは容赦のないドリルや刃やギロチン。
これが襲ってくるんです。そりゃ怖い。無機質なのがよくて、武器人間たちの意志を感じ取ることができないんです。意味なく襲ってきてるような印象があり、良い意味ですごい嫌でしたね。
俺のお気に入りはサムネの方です。機械なのに滑らかで、かつ見た目に死神とか悪魔崇拝のようなテイストもある点がグッドです。
また映画後半にもたくさん機械人間シリーズは出てきて、そのどれもが素敵でした。生足版R2D2みたいなのも出てきますよ。
そしてもう一つグッドポイント、良い塩梅のグロ描写。
この作品は武器人間が襲ってくるのでちょくちょく人が殺され、グロ描写が出てくるのですが、それがまあちょうど良い。
決して軽くはないですが、テリファーやホステルほどはやりすぎてない。ムカデ人間のように生理的な気持ち悪さがあるわけでもない。塩梅が本当に適切。
前半は武器人間たちによる殺しがメインなのに対して、後半には外科的なグロ描写も出てきます。これも中々良いですよ〜。これについては後ほど触れますね。
さて「武器人間」は最初はただ武器人間たちに襲われる映画なのですが、中盤で救難信号が噓であることが発覚します。さらにその嘘の救難信号を出していたのが撮影者役のディミトリくんであることがばれてしまいます。
ここからがえぐい。
ディミトリくんは仲間たちに武器人間の巣に捨てられてしまいます。仲間たちは命懸けでここまできたのに嘘だったんですからそりゃお怒りですよね。
捨てられたディミトリくんは仕方なく武器人間たちのアジトの奥へ奥へと進んでいきます。
土を掘る武器人間、たくさんの吊るされた死体を処理する武器人間、意識のある女性の頭が取り付けられたテディベア、訳の分からない世界をカメラに収めていくのですが、とうとうギロチン持ち武器人間に襲われて気を失ってしまいます。
目が覚めると目の前には博士がいました。博士とは今まで出てきた武器人間シリーズを作り出した張本人です。
ではなぜ博士はソ連兵のディミトリくんは生かしたのでしょうか?
それはディミトリくんに自身の研究を映像に収めさせるためです。
ここからディミトリ君と博士のラボツアーが始まります。。。
ここまででもだいぶ異質ですが、ここからが圧倒的。博士の異常性に迫るのです。
カメラの前で博士は何をしたと思いますか??
なんとソ連兵の共産主義者右脳を、右脳を切除した資本主義者のドイツ兵へ移植したのです。
共産主義の右脳と資本主義の左脳を1人の人間に入れ込み、お互いの相容れない考えを強制的に分かり合わそうとしたのです。思想の違いから戦争は始まりますから、思想同士を和解させる、博士なりの戦争解決の糸口だったようです。
しかしはっきり言って頭がおかしいです。共産主義と資本主義がお互い分かり合えないからと言って、だれが頭を開いて脳を融合させようと思うのでしょうか。
確かにこの方法は合理的かもしれません。お互いの考えを「わかってしまう」状態になってしまうのですから。
ですがそもそも普通の人はこの構想を思い付くのでしょうか?そして実行しようとするのでしょうか?
いいえ、しませんね。博士は本当に狂っているのでしょう。
怖いですね。拗らせてしまうとここまでイカれてしまうのでしょうか。自分の異常性は自分じゃ判断しにくいです、自分の中では当たり前ですので。
ですが博士には妙な説得力もありました。自分の研究に絶対的な正義や大義名分を持っているようでした。作中でも言われていたように、異常者と奇才は紙一重です。博士をただの異常者だと決めつけてしまうことも愚かなことなのかもしれません。
とにかく良いビジュアル、良い塩梅のスプラッタ、2つのグッドな演出に加え、想像を遥かに超える博士の異常性を覗く後半部分。
久しぶりにすごい映画を見せてくれた武器人間、本当におすすめ。
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